| 日程 | 2026年2月13日~15日 |
| メンバー | 中澤 慧 |
| ルート | 三ツ又~明神山~黒又川第二ダム横断~桧岳~太郎助山~大白川駅 |
| タイム | 2/13 三ツ又(6:20)-明神山(10:40)-黒又川第二ダム(15:10) 合計8時間50分 2/14 C1(2:50)-P1122(8:40)-桧岳(12:00)-Co1350(16:00) 合計13時間10分 2/15 C2(6:15)-百字ヶ岳(6:45)-太郎助山(7:45)-R252(14:30)-大白川駅(17:05) 合計10時間50分 |
この周辺の山々には、あくまでもオリジナルな線でルートを創り上げたいと思う。
——菅井猛 『岳人』No.658(2002年4月号)「特集 岳人特選マイナー12名山」
越後の怪峰、桧岳。黒又川第二ダム経由で行こうと、最初に羽根川林道を歩いたのは2022年2月26日だった。以来、毎年試みてはいたが、行けなかった。
5度目の取り組みになる今年。実力不足で計画は完遂できなかったが、ようやく自分の納得できるラインで桧岳を踏むことができた。行程がだいぶ遅れたため、諦めて大白川へエスケープした。ひとまず冬の桧岳はこれで一区切りとして、やり残した課題は今後ゆっくりやっていきたい。
1日目 (2/13)
三ツ又に夜中に着くも雨。しばらく寝て結局6時過ぎに出発。もう何度も来ている羽根川林道を歩く。最近と思われるトレースが明神山まで続いていた。以前は林道を奥まで行ってから山越えをしようとしていたが、ぱっぱと尾根に乗って稜線を移動した方がいいことを知っている。明神山を目指して取り付く。最初だけクラックが空いていて、乗り越えるのに難儀する。少し上がったあとは緩やかな尾根を歩いていく。

だんだんと霧が取れていく。毎年ここに来ているが必ずカモシカに遭遇する。同じ個体たちなんだろうか。他の山域と違って羽根川沿いの山々は標高400~500mでもハゲているので視認しやすいのもある。


意外と沈むのと、重荷でまったくペースはあがらないも、黙々と歩いて明神山へ。

駒ヶ岳はまだガスの中だが、このあたりの低山の皺がよく見渡せる。
そして、目標の桧岳が聳える。手招きされる。

明神山からは、風の影響を受けた稜線には雪庇が波打つ。標高は1000mに満たないが複雑な尾根を辿る。難しくはない。それでも気が抜けない。越後駒ヶ岳や中ノ岳にスキーで行く方がずっと楽だ。一ヶ所、雪庇の張り出しから支尾根への降り場がわからなかった。単独なので、横着をしないでロープを出して確認した。


時間をかけてゆっくり下っていく。黒又川第二ダムが近づいてくる。と同時に本当に渡れるのかという不安もつきまとう。冬の黒又川第二ダムは雪に覆われているのでパックラフトは持ってきていない。かといって、黒部ダム(標高1435m)と違って、標高405mとしかない湖を一か八かで渡れるわけがない。三国川ダムでも氷を踏み抜いて溺れてるシカを見ている。なので、スノーブリッジか渡渉だ。

高倉山から黒又川左岸尾根への縦走に計画を修正しようか、などと考えながら降りていく。黒又川が近づくにつれて、雪が緩んでズブズブになってきてクラックも増えてきた。ようやく中岩沢の出合が見えた。夏に来たときはここは完全に水の中だったが、狙い通り川になっている。

観察したくて止まりたいが、行けそうな気もして足がはやる。ブリッジは無いが渡れそうな場所がある。ダム湖が減水してバックウォーターになってるのでかなりの急斜面だが、雪を繋いで川に降りれた。タイツや靴を脱いで、渡渉用のネオプレンに履き替える。冬の渡渉は裸足でやって何度も痛い目を見ているので今回はちゃんと持参した。いざ入水すると当たり前に冷たい。それでも雪に這い上がるときは履いていてよかったと心から思える。


水を汲んだら移動して、今日はここまで。はじめて来たときに泊まりたいと思っていた場所だったので感慨深かった。テントを張ったあたりで雨が降り出す。ご飯を食べて暖かい飲み物を飲んでシュラフにもぐる。寝そうになると雪崩の音で起こされる。
夜、また雨音で起きる。止んでくれよ。テントは、上に発生区が無いような位置に張った。それでも雨音や雪崩の音がドカドカしていると、本当に大丈夫か不安になってくる。
2日目 (2/14)
今回のルートは黒石沢左岸尾根。西峰経由も美しいが、夏に登攀した中岩沢の不動滝を見たかったため、こちらを選んだ。この尾根は『越後三山・只見集成図』に登山道の記載があり、ゼンマイ坂と名付けられている。しかし30年前でも、毛猛連山の道は廃道となっている。なお、桧岳には北西尾根にもかつて道が通じており、そちらは『越後三山集成図』に記載があるが、現在はいずれも廃道である。
夜の雨はいつの間にか止んで、ぐっすり寝ていた。雪がしまってるうちに早出。と思ったら全然しまってない。標高400mの沢沿いなのもあるだろう。高度をあげていくが、馬鹿みたいに時間がかかる。重いラッセル、クラックや細尾根、踏み抜きで本当に進まない。

P1122mにたどり着いたときには、すでに9時前だった。ほとんど休憩を取らずに歩き続けたが、標高差わずか700mを上げるのに6時間弱も要した。この尾根を選んだ目的の一つ、中岩沢西ノ沢の不動滝は埋まっていて見ることはできなかった。

ここからの桧岳までの尾根も難儀。クラックの迷路に阻まれ、ルーファイに苦しむ。スコップ出すほどでもない中途半端さが厄介。技術的には大したことはない。しっかり見極めて、進めるだけなのだかメルタルにくる。
一歩一歩団子になった雪を取る。進みが遅くても確実に処理していく。雪をピッケルで払ってる最中、ピッケルがすっぽ抜けた。幸い地面に刺さって止まってくれた。こんなところでピッケル無くしたらたまったもんじゃない。スリングをつけてバックアップをとった。
歩くだけと思っていたので、ピッケルもスキー用の軽量のものを持ってきたが、普通に縦走用のを持ってくればよかった。残雪期など、コンディションによって変わってくるだろうが、こんなに出番が多いとは。

終始気が抜けず、写真を撮る余裕が無い。ノドもカラカラ。とてもじゃないが今日中に毛猛山を越えるのは現実的ではない。あまりの遅さに計画の変更を余儀なくされる。標高差250m進むだけなのに、3時間かかっても桧岳に届かない。

雪は二段階のモナカの上に数センチの積雪があり、モナカの層がズレるとアイゼンを効かせていても滑る。なので二層目のモナカの奥まできめてから体重を移す。
クラックが多すぎて尾根上を進めないこともあった。一度降りてからトラバースして登る。するとカモシカのトレースに合流する。なるほど、よく考えている。左には鋭い西峰が目に入る。カモシカのトレースは西峰にもあった。縦横無尽だ。

クラックが減って、少し歩くと山頂だった。魚沼市からも見える憧れのピークにようやくたどり着いた。感無量。


桧岳についたらあとはサクッと進むと思っていたら、こちら側もすごいクラックの数。もう、何度踏み抜いたり、落ちたかわからない。雪庇にヒビをいれるのも何度もやった。音が本当に心臓に悪い。


深いグライドクラックにも落ちた。ピッケルを刺して止める。ザックを外してスコップを取り出して工事開始。這い上がるのに15~20分くらいかかった。こんなことやってたりで進まない。桧岳から4時間かかっても百字ヶ岳に着かず、500mくらい手前で泊まった。そういえば、中岩沢を遡行したときもこのあたりで夜を明かした。

3日目 (2/15)

暗い中、クラックの尾根を歩くのがいやで、明るくなってから出発する。素晴らしい朝だ。
ここから百字ヶ岳まではまったくクラックはなく、雪もしまっていて、サクサク進めた。移り変わる空に夢中で写真を撮る。


写真撮影に夢中で止まっていたら、日が昇りそうで、あわてて百字ヶ岳まで駆け上がる。中岩沢を遡行したとき、風に吹かれながらここで日の出を迎えた。その記憶をたどりつつ、山々を眺めた。



百字ヶ岳からは毛猛山へは向かわずに、大白川駅へエスケープする。太郎助山までの稜線もなんの問題もなく、歩きやすかった。こういう感じを想定していたのだけれど。
太郎助山からは、以前歩いた足沢山経由ではなく北尾根へ。太郎助沢(桂口沢)の斜面がとてもよく、板があれば滑りたいところだった。

細い部分はカモシカに導かれながら歩く。クラックはあるが、昨日に比べればはるかに楽だ。

Co1100mのポコを越えれば、尾根は広く、歩きやすい。かつては道も通っていたという。車道歩きが長くなる点を差し引いても、足沢山経由よりオススメだ。北東の森は、R252が冬でも開通していたら大人気になりそうな場所だ。

Co700mあたりも泊まりたい場所があり、毛猛のやさしい側面を見れた。いいところだ。
尾根を降りたら、西日で緩みに緩んだ国道をザラメラッセルしていく。

最後は車道を走って、大白川駅には17:05に到着。電車にギリギリ間に合ったと思ったら、時間を勘違いしていて、17:04発だった。ギリギリアウト。妻に泣きついて迎えに来てもらった。

憧憬の山域・毛猛。毎回大変な思いをする。それがいい。