ビンディング

私が山スキーで現在使用しているビンディングは、ATK Haute Route 10 Plusだ。

山スキーにおけるビンディングで大事にしている点は
・トラブルが少ないこと
・堅牢であること
・シンプルであること
・軽量なこと
などで、ここに「滑走性能」は含まれていない。
山スキーでは、歩いている時間が全体の7〜8割、多ければ9割近くを占める。滑りの性能以上に、「ストレスなく登れて、帰れること」のほうが重要だと考えている。

目次

トラブルが少ないこと

最重要。歩き重視か滑り重視かでも選ぶビンディングは変わってくるが、トラブルはない方がいい。
ビンディングのトラブルは、そのまま遭難に直結する。近場の日帰りや春山であれば、最悪歩いて下山できるかもしれない。しかし縦走中や深雪の中では、それすら不可能になる。

破損トラブル

G3 ZED12
トゥパーツが破損

トラブルが多いビンディングの例として、G3 ZEDが挙げられる。
入手性の高さ(=使用者の多さ)からか、SNS等でもトラブル報告をよく目にする。
・ブレーキ破損、戻り不良
・トゥレバー破損
・トゥレバー振り切り(開かなくなる)
・ヒールピースガタツキ
・ウォークモードが勝手に解除される
G3は代理店キャラバンのサポートが手厚く、対応も親切だ。ただ、そもそもトラブルが頻発する時点で、山で使う道具としての信頼性には疑問が残る。壊れても丁寧な対応で直してくれることよりも、現場で壊れないことの方が重要。クトーも含めて、全体的に使い勝手はいいので、既存で使っているものは近場ではまだ使い続けている。

雪詰まりトラブル

MARKER KINGPIN 13
雪詰まりしてトゥが嵌めれなくなった

破損だけでなく、雪詰まりも大きな問題だ。特にラッセルがある状況では顕著になる。
MARKER KINGPINは、トゥピースの間に雪が詰まり、なかなか取れない場面をよく見る。
ARMADA SHIFTも、構造上どうしても雪詰まりしやすい。
晴天無風なら時間をかけて掻き出せば問題ないが、風雪の中ではトランジションのスピードが重要になる。そこで手間取ると、消耗や焦りにつながる。滑走モードに切り替えるときは山頂などの標高をあげた場所が多いので、低い標高で詰まる→高い標高で凍るなどして、厄介だ。
また、雪詰まりした状態で滑走すると、誤解放のリスクもある。とくに、アルペン系のビンディングを使用している人は飛ばしたい人が多いと思うので、高速度で誤解放すると非常に危険。

堅牢であること

樹脂パーツが多いビンディングは、割れや破損のリスクが高い。
そもそも山で使うビンディングは、雑に扱いたい。丁寧に扱わなかったから壊れてるようでは困る
ブーツの雪を落とすときにガシガシ叩いても問題ない、雑に操作しても壊れない強さが、山スキーでは必要だ。

シンプルであること

シンプルであることはトラブルが少ないことにも繋がる。パーツが多いと、その分トラブルも増える。
たとえばソール長調整機構。ブーツを替えたときに調整できるのは便利だが、滑走性能には一切影響せず、重くなるだけの存在だ。
次にブレーキ。ブレーキとリーシュのどちらが良いかは場面によるが、私はブレーキ不要派。これも滑りに寄与せず、トラブルが増え、重量が増すパーツだ。パウダー用の板ならブレーキを付けること自体、矛盾しているとも思う。深雪では、ブレーキがなくても板はほとんど流れない。
さらに、ヒール周りがゴチャついていると、重い雪が張り付いて団子化する。これを毎回ストックで落とすのはかなりのストレスだ。

G3 ZED12
ブレーキレスでもヒールまわりのパーツに雪が付着して団子化

ヒールの真下は、できるだけ何もないほうが団子になりにくい。

ATK HR10
歩いても雪が付きにくい
ATK FR15 EVO
ブレーキレスでもヒールまわりがゴチャついているため雪が付着して、団子化しやすくなる

軽量であること

体力があれば全く重要ではない。私は体力があるほうではないので、道具でカバーしている。
ただし、軽量化を目的にするというより、シンプルな構造を選んだ結果として自然に軽くなっている、という感じだ。

トラブルが少ないものは、堅牢でシンプル。シンプルなものは軽量。

フリーライド寄りの人でなけれはアルペン系のビンディングは雪詰まりもあるし、重量に見合っていない気がする。

ヒールリフター(クライミングサポート)が高いこと

最近のブーツは足首の可動域が大きく、ビンディングも低めのヒールリフターが主流だ。それでも、高いリフターが欲しくなる場面は多い。
ビンディングの製造はほぼ海外メーカーだ。海外のフィールドは、広い斜面を、緩いトレースで効率よく登り、スキーを滑らせながら前進する思想で設計されている。実際低いヒールリフターで登れるようにジグを切ると非常に登りやすいし、そういうトレースを心がけている。
けれど、日本の山は、細い尾根、樹林帯、直登せざるを得ない急斜面、深いラッセルなどがある。こういう場面では、高いヒールリフターが欲しくなる。
ただ、今後も高いリフターを備えたビンディングは増えないと思うので、この条件は諦めている。

ヒールリフターの高低比較は、カタログの高さだけでは不十分で、トゥ側の高さも影響するために、実質的には角度が指標になる。この点についてはkawazakanaさんが自由研究をしていた。
なお、ソール長が短い方が角度がつくため、足が小さい人ほど、同じヒールリフターでも高く感じる。

まとめ

以上のような条件で私が現在使っているビンディングがATK Haute Route 10 Plus。これのAdjustment Plateを外して、さらにシンプルにして使っている。ヒールリフターの高さは妥協しているが、滑りでもとくに不安を感じたことはなく(FR15evoと比較しても、滑走性能が低いとは感じない)、HR8の頃から、山行中のトラブルはない。

重視するものによって好きなビンディングを使えばいいが、山で使うならトラブルは少ないほうがいい。

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