| 日程 | 2026年08月5~8日 |
| メンバー | 渋沢 暉、中澤 慧 (計2名) |
| ルート | 東大鳥川西ノ俣沢遡行~化穴山~三面川横山沢化穴沢下降~以東沢遡行~以東岳 |
| タイム | 8/5(水) 晴れ 駐車地点(6:50)-泡滝ダム(7:10)-金堀沢(10:00)-甚六沢(11:50)-ツバクロダイゼン(12:30)-上ノ河原(13:20)-三俣(15:40)-水上沢Co880mC1(15:50) 合計9時間 8/6(木) 晴れ C1(5:50)-化穴山(9:40/10:15)-横山沢(16:40)-以東沢(17:30)-Co460mC2(17:45) 合計11時間55分 8/7(金) 晴れのち夕立 C2(5:50)-ゴジリデ沢(7:25)-コボウシ沢(11:00)-大滝下Co1320mC3(14:05) 合計8時間15分 8/8(土) 晴れのち豪雨 C3(5:15)-主稜線(6:25)-以東岳(6:45/7:20)-泡滝ダム(12:45) 合計7時間30分 |
朝日の渓に通うようになって、必然的に三面川流域にも入りたい想いが強くなった。岩井又沢、竹ノ沢と行きたい沢はたくさんある。しかしながら、三面側は2022年8月の豪雨災害により朝日スーパーラインが通れなくなり、2026年現在も通行止めだ。
数時間歩けばいいだけなのだが、日数の問題など、言い訳を並べて行けていないのが現状だ。今回はそんな長らく通行止めとなっている三面川流域、その本流である以東沢へ、山越えで訪れることにした。
先日の雨で水量が心配だったが、西大鳥川のライブカメラを見続けていると、減水傾向にあった。
1日目 8/5(水) 晴れ
泡滝ダムに着くとなんとか遡行できるレベル。西ノ俣沢はとんでもなく綺麗。まさに朝日の夏といった感じだ。白い花崗岩に碧い水。太陽に照らされて輝いている。しばらく山に行けていなかったので、気分も高まる。


釜滝は右岸からいい感じで越えた。やや細かったので荷揚げをした。旧魚止滝の左岸を登ると、奥に隠れた次の滝が見えて、風格が良かった。

今回初めて山に一緒に行く渋沢さんも綺麗な渓にニコニコだ。彼は朝日連峰は今回で4本目らしい。話を聞くと三面川岩井又沢、八久和川、西大鳥川桝形川を遡行しているようだ。桝形川とは渋い。さすが釣り好き。

西ノ俣沢はとにかく明るくて気持ちがいい。


ネジレ滝は右岸から巻いていく。落口へ降りるのはやや怖かったので、少しあがるとバンドになっていて、そのまま懸垂なしで奥側にうまい具合に降りることができた。リスクを排除したいいラインだった。


予備日含めて5日分の装備のザック。渋沢さんは担げて、速いが、荷物が重いので、微妙な登攀があるところは積極的に荷揚げしてサクサク越えていった。

水がとんでもなく綺麗。ゴルジュ区間は巻き主体になってしまうが、沢を進めるところら美しさにため息が出る。

いよいよツバクロダイゼンが姿を表す。「渓の翁」故・瀬畑雄三が名付けたらしい。



ツバクロダイゼンは右岸から巻いていく。途中に沢というか水があるルンゼが入っていて、ルンゼを降りていくとゴルジュ内へ降りれそうだったので、私は内部を見にいく。ちょうど下から見えていたF1の上に降り立つことができた。ゴルジュ内は真っ白で明るい。そのため、水勢は強いが威圧感はあまりない。次のCS滝は越えるのが大変そうだったので、ルンゼをもう一度登り返して渋沢さんに合流し、巻きを継続。降りた先で最後のCS滝を越えると河原になった。

ここから釣り上がっていく。私が2匹釣る間に渋沢さんは30匹も釣っていて驚く。水上沢に入った先の砂地で快適な場所で泊まることにした。夏の朝日の渓なのにアブは全くいないし、蚊もいない。


ここまで釣った魚は、全部リリースしてるので、渋沢さんは食べる分を釣りに出かけたが、あまり釣れなかったようだ。三つ俣の下部がいちばん沢山いた。それでも刺身と塩焼きで絶品だった。朝日の渓くらいイワナが多く、彼くらい釣れれば行動食は本当にいらないだろう。



2日目 8/6(木) 晴れ
害虫も全くいなく、本当に快適だった。タープは結露でびしょ濡れ。まずは水上沢をつめて化穴山へいく。
三面川に行くだけならコルから行けばいいので、化穴山を踏む必要はないが、私はピークにこだわりがある。
1箇所雪渓があったが、通過に支障はなかった。水上沢は問題になるような地形はなく非常に快適。東甚六から山越えで三俣まで遊びに来たりしてもよさそうだ。

最後はひどい藪で、悪態をつきまくる。渋沢さんは速すぎて、私より20分も早く山頂に着いていた。ずっと声は聞こえていたが、全然追いつけなかった。化穴山の山頂は素晴らしく、いつまでもいたかった。遠回りしてでも本当に来てよかった。


化穴沢の下降に入る。上流は問題になるような箇所はなく、サクサク下っていくが、途中から滝が増えてくる。


ところで、化穴山の山名は狐が人を化かすことに由来するのかと思っていた。主稜線には狐穴小屋もある。 しかし、「ハケ・バケ」は崖・急斜面を意味する地形語でもある。1920年代には、三面の猟師や三面側から入山した登山者が「化穴山」と呼んでいた記録がある。実際、ここ化穴沢はゴルジュ・崖・滝が連続する険しい谷で、この地形ともよく一致する。三面の山人たちがこの一帯を「バケアナ」と呼び、それに「化穴」の字が当てられ、化穴沢やその源頭の化穴山という名になったと考えると納得がいく。あくまで私の推測だが。


つまり、我々が今降りてるこの場所こそが”バケアナ”なのではないか?ということだ。

側壁が高くなり、狭まっていく。

743より下流にくると古い捨て縄を発見。帰宅して調べると、どうやら20年以上前にトマの風のPTが、我々と同じルート取りで遡下降していたようだ。トマの年報が家に無く、詳細記録は読めていないが743より上流には残置はなかったので、西ノ俣沢から大影境側のコルから山越えして743まで降りたと思われる。いずれにせよ、これより下流は誰かが下降できているということだ。人の痕跡は基本的にあまり歓迎しないが、山奥で見る古い痕跡は悪くない。ここを下った人がいるんだ。
※追記
後日、童人トマの風『年報 とまのかぜ』25号(特集「原生流域へのいざない」)を読むことができた。
2003年8月13〜16日、石井幸志(L)、田邊一世(SL)、佐藤仁、戸田亮介らが、西ノ俣沢〜化穴沢〜以東沢と、我々と同じルートをつないでいた。大影境のコルから化穴沢左俣を下降し、743地点に降り立っており、推測通りだった。20年以上前に、同じ発想で遡下降していたのだ。やはり昔の人たちはすごい。


懸垂下降が連続してなかなか大変だ。渋沢さんが、戸隠・妙高の縦走のブログの最後に「ひとつひとつ丁寧にやった結果」と書いていたが、これは本当にそうで、登山はこうした行為の積み重ねの上にしか成立しない。
できることを丁寧にこなして下降していく。


そんなこんなでようやく横山沢についたのが16:40。いい幕営場所もあり、正直もう横になりたかったが、日が長いのでもう少し頑張ることにして横山沢を下っていく。

以東沢に着く頃には18時前になっていた。私はもう動きたくなくて、焚き火をつけて米を炊く。
渋沢さんは薄暗くなってきたこの時間からも釣りに出かけて、30分で10匹以上釣っていた。しかも、私が見える範囲で大して移動もしていない。どれだけイワナが多いんだ以東沢…。
そして19時近くになると、全裸になって入浴していた。ぬるいから気持ちいいと勧められたが、すでに焚き火で温まっていたので遠慮させていただく。


大鳥側では居なかったアブだが、三面側では少しいた。渋沢さんが、魚を捌いていると、血の匂いに惹きつけられたのか大量に纏わりつかれていた。そして、もう一度入浴していた。
ちなみに彼は1食2合食べる。たくさん動いてたくさん食べる。いいねえ。


3日目 8/7(金) 晴れのち夕立
翌朝、支点にしていた雪渓が崩壊。私は焚き火の隣で寝ていたが、渋沢さんは結露で濡れたタープに潰されていた。
以東沢は優しい渓で、水量はあるのものの穏やかだ。長らく人が入っていないのでイワナだらけ。最初から釣りながら進んでいく。

私は2匹、渋沢さんは50匹以上釣っていた。(私はイワナより木の方が多く釣れた)

写真左は追ってきたイワナ

下手な私も尺上が釣れた。三面川はすごい。人が入っていないとこうなるのか。釣り人にとっては天国だろう。
そういえば、釣り師は「場所を書くと人が来て魚がいなくなる」という理由で、釣行した場所を隠す。ところが、朝日や飯豊の源流は、こうしてブログに書いたところでなかなか来れない。簡単にいえば、イワナがいなくなるような渓というのは、人が来やすい場所、車道から近い場所なのだ。ここ以東沢では仮に100匹食べても、きっとイワナ達は逞しく命を繋いでいけるだろう。
そう考えると、三面川のアプローチはこのままの方がいいのかもしれない。歩けば辿り着けるのだから。

私は竿をしまって動画撮影をしながら進む。渋沢さんは速すぎる、釣りをしながらなのに追いつけない。以東沢は難所はなく、イワナが多く、ところどころ綺麗で、初心者向きだ。
途中から私の股間が悲鳴をあげる。仕方なく陰茎にテーピングをまく。セルフコンドーム。10年以上登山をしてきて、こんなことはじめてだ。苦痛に耐えながらなんとか以東沢の大滝下までたどり着く。

大滝手前までイワナが住んでいて驚いた。映画『越後奥三面』で三面の人たちの行動範囲には驚かされたが、きっと猟師達が放ったのだろう。なお、この映画や書籍『山に生かされた日々: 新潟県朝日村奥三面の生活誌』はオススメだ。朝日連峰で三面の人たちの山での暮らしがわかる。我々はレジャーで山に入って遊んでいるだけだが、昔の人達は本当にすごいと実感できる。
さて、今日中に以東小屋まであがることもできたが、野営して焚き火をしたかったので大滝下までとした。


タープを張る頃には夕立がきた。降る前に薪をタープの下に突っ込んだので、問題なく焚き火で米を炊けた。奥利根で流されそうになった経験があったので、いつでも逃げれるように沢靴を履いたまま食事をしていたが、増水しなくてよかった。ちなみに渋沢さんは大丈夫っすよ〜と早々に裸足になっていた。この日はタープの下でしっぽり焚き火をして寝た。

4日目 8/8(土) 晴れのち豪雨
翌朝、大滝は見た目ほどではなく、快適に登れる。ノーロープでサクッと滝上へ。

そこから登山道に向けて沢を詰める。化穴山に比べれば、たいしたヤブではなかった。
登山道に出たらもう以東岳は目の前だ。7時前に以東岳についてのんびりする。ここは本当にいい山頂だ。朝日連峰の百名山は大朝日岳だが、私は以東岳(二百名山)の山容の方が好みだ。


下山コースはオツボ峰経由にする。直登コースよりこちらの方が景色がいいのだ。渋沢さんは速すぎて追いつけないので諦めてゆっくり下りる。最後は豪雨に降られて、下山。東大鳥川は濁流になっていた。

化穴山と以東岳を沢で繋ぐことができて充実の沢旅となった。三面川流域ももっと入りたい。できればもう少し長く。
渋沢さんありがとうございました。
遡行図

