佐梨川金山沢奥壁
第五スラブ

日程2026年05月18日
メンバーごっくん、前田工、中澤 慧 (計3名)
ルート佐梨川金山沢奥壁第五スラブ (14P、Ⅳ、オールフリー)
タイム駒の湯(2:15)-金山台地(4:30)-第五スラブ取り付き(5:10)-郡界尾根(14:25)-オツルミズ沢(15:10)-駒の小屋(16:50)-越後駒ヶ岳(17:20)-駒の湯(20:00)
合計17時間45分

金山沢奥壁は2年前に仲村と第三スラブを登った。そのときに気になったのが第五スラブの存在だ。第五スラブは奥壁の中で唯一水線がある。この時期は上部に雪田が残るため、スラブに水が供給され続けて、水が流れているのだ。沢ヤ的にどうしても惹かれてしまう。

また、第五スラブは1970年の初登、1974年の冬期初登(ロストアローの坂下直枝ら)以降は登ったという記録を見ない。50年以上登られていないかもしれない。『日本登山大系』でもルート図の記載が無く、スラブがビクトリアフェースの裏側へと回り込んでいるため、鉱山道からは全貌が見えない。

こうした特性から、第五スラブを登りたいと感じていた。何より私は越後駒ヶ岳が好きなのだ。好きな山をもっと知りたい。そういう思いで、もう一度、佐梨へ向かった。

水があるのが第五スラブ(撮影:仲村崚)

2時に駒の湯に集合して佐梨川林道を歩いていく。豪雪の昨年はあった雪渓はまったくないが、2年前と違い林道は荒れていて、奥までは車で入ることはできない。

林道終点には昨年はなかった看板が設置されていた。家ノ串尾根の末端にはテープやFIXがあり、山ノ神の分岐にも看板があった。これらは2年前には無く、最近設置されたものだ。どちらも不要な残置だと感じる。佐梨はそういう場所では無いと思うのだが。

山ノ神を過ぎて鉱山道へ入っていくと高度感が出てくる。
「僕、高いところ苦手なんですよね」
「俺もそうなんだよ」
「同じく」
我々はいったい何をしに来ているんだ……。

遠目で見た感じではスラブと雪渓の間が結構空いていて敗退が漂うが、近くまでは行く。金山台地で「ようこそ佐梨へ!」とブヨの大歓迎。全くありがたくないので休憩もそこそこに雪渓へ。敗退を含めて何度か来ているが、台地の奥から雪渓へ移るのは過去一スムーズだった。

雪渓を下っていく。寡雪だったからか、第四スラブもシュルンドが大きく離れている気がする。第五スラブに確認に行くと隙間はあるものの、なんとか乗り移れそうだった。

「下部の傾斜はそこまで強く無いので、沢靴のまま行って上のテラスで準備しよう」という、ごっくん提案にのる。バイルを雪渓に刺して、チェーンスパイクのままスラブに乗り移る。スラブでチェンスパを外してガチャも付けずにワラワラと登り出す。難しくは無いが、見た目より立っており、外傾したスタンスに石や藁がたくさん乗っていていやらしい。上からポロポロ落石がある。フォールラインに重なっているので危険だし、ロープを担いでるので重い。

第五スラブ取り付き
チェンスパのまま乗り移る

1P 30m Ⅲ ごっくん

完全に失敗したが、途中からロープを引いてもらい、微妙なテラスでピッチを切り、落とさないように沢靴からクライミングシューズに履き替え、ガチャを出してロープを結ぶ。どう考えても雪渓上でやるべきだった。

藁と石がたくさん乗っている

2P 60m Ⅲ 前田

快適にスラブを登る。日陰から出ると、かなり暑い。魚沼市内の予報は31℃。以後すべてのピッチで「暑すぎる」を連呼する。スタンスに乗っている藁や石の量も減ってきてよかった。

2P目の爽快なスラブ
2P目でビレイする前田とフォローするごっくん

3P 35m Ⅲ 中澤

左上と迷ったが、一段上がって、水流を横断して登る。屈曲してロープが重くなったのでピッチを切った。

3P目 水流の方へ吸い込まれていく

4P 55m Ⅲ ごっくん

快適なスラブ。もう一度水流を横断してノーピンでロープを伸ばす。スラブを通して全体的に支点を取れる場所が少なく、登ることよりもビレイ点の構築に時間がかかる。

広大なスラブの4P目

5P 55m Ⅳ 前田

傾斜が強い。左から登り、ブッシュで支点を取ったあとは外傾したスタンスで際どいトラバースをしてから、水流を横断。なかなか悪かった。

リードする前田。一段あがってから水流を横断した。
5P目の終了点

6P 50m Ⅲ 中澤

雪渓からだいぶ離れたのに延々とブヨに纏わりつかれる。第三スラブで大変な目にあったので、靴下の中に長ズボンを入れて対策したのだが、貫通してきて痒すぎる。

リードする中澤
6フォローする前田。今年の魚沼は大雨が降っていないので、まだ泥が乗っている。

一段あがると広大なロケーションで思わず声をあげる。快適なスラブをノーピンで登る。暑さでなかなか足が前に出ない。ビクトリアフェースの屈曲点の手前の大きなテラスまで。ここもいいリスが無く、支点構築に時間がかかった。

6P目の終了点。スラブは左へ屈曲している。

7P 60m Ⅲ+ ごっくん

一段登ると、右からルンゼが合流。スラブが左へ屈曲し、いよいよビクトリアフェースの裏側へと回り込む。ここに来たかったのだ。ごっくんの打ったハーケンが、私のリーチでは遠く、回収に苦労した。

フォローする前田
ビクトリアフェースの裏側へ回り込んでいく。なかなか無い地形だ。

8P 60m Ⅲ 前田

抉られた面白い地形で、第五リッジが見える。水流の右を快適に直上していく。テラスに古のリングボルトが1つあった。第五スラブで唯一見た残置物だった。さらに上の大きなテラスでピッチを切る。

8P目をリードする前田。

9P 60m Ⅲ 中澤

今度は右へと屈曲していく。水線を登っていく。これはもう沢登りだ。ロープがいっぱいになってピッチを切る。フォローが速すぎるのと、腕が疲れすぎてロープアップが追いつかない。ハング大滝が見えた。

水線へ。
9P目をフォローする前田。完全に沢登り。

10P 40m Ⅳ ごっくん

出だしが細かくて悪い。そこを越えれば大滝の下に着く。第五リッジへ移って、コシアブラのテラスでピッチを切る。後ろにビクトリアフェースの頭が見えた。だいぶ上がってきた。

大滝が近づいた
大滝下部
コシアブラのテラス。暑すぎてキツイ。

11P 60m Ⅲ 前田

ブッシュだが、岩も出てくるかもしれないので、一応ロープは結んだまま。2人は沢靴に履き替えていた。藪漕ぎというか垂直木登り。ロープアップで疲れすぎて、腕がすでにパンパンなのでブッシュを脇に抱えながらレストする。強傾斜の藪漕ぎでは重要なテクニックなのだが、使う場所は少ない。岩を右から越えてロープをめいっぱい伸ばす。石楠花のテラスまで。

12P 35m Ⅲ- 中澤

ここも腕力頼りに、空中に浮いたりしながら木登り。藪で屈曲し過ぎてロープが手繰れなくなってピッチを切る。反対側に第四スラブ上部左フェースが見えている。ぶっ立ちすぎ。

第四スラブ上部左フェース

13P 30m Ⅲ- ごっくん

木登り。大滝を越えた。ルンゼに復帰できそうだが、雪渓のカス(泥と藁)が残っていて不快そうなので、ロープを一本にしてコンテでもう少しリッジを進んでから下りることに。

14P 200m Ⅲ 前田 コンテ

越後の山だ

快適な藪漕ぎで少し上がると、すんなり水線に戻れた。水が冷たくて美味すぎる。水を飲みながらサクサク進んで、適当なテラスでピッチを切ってロープをしまう。雪渓が最近まであったため、カタクリが咲いていた。結果的にここもロープは要らなかった。


水を汲んだら、ルンゼをつめると雪田についた。第五スラブに水を供給しているのはコイツだ。
最初の一滴を訪ねるこの行為は沢登りそのものだ。

雪渓を越えたらそこが正面尾根で、すぐに郡界尾根だった。郡界尾根は藪も少なくワイワイ歩いていく。昨年スキーで辿ったところも、2年前のダイレクトスラブのトップアウトした場所もハッキリ覚えている。駒での思い出がリンクしていく。

郡界尾根を進む。左が金山沢奥壁、右がオツルミズ沢とマキグラノツルネ

最低コルからオツルミズ沢へ下りたら、フィナーレだ。本当に気持ちがいい。途中で滝が出ていて、ピカピカのラッペルボルトがあった。昨年、オツルミズ沢をキャニオニングしたという投稿をSNSで見かけたが、そのときのものだろうか。隣にブッシュがあるのに、わざわざボルトを打つ必要があるのだろうか。先にも書いたフィックスロープや看板などもそうだが、大好きな駒ヶ岳が汚されていくのが見るに耐えない。

オツルミズ沢を登っていく

ブヨに纏わりつかれながら雪渓を歩く。駒の小屋へ着いたのが17時前だが、当然ピークは踏む。登山だから。山頂へ着いたのはもう17:20。さすがに誰もいない。素晴らしい夕暮れで、長居したいところだが、下山する。

駒ヶ岳山頂にて
駒ヶ岳が好きだ。

小倉山まではかなり残雪が拾えて、だいぶ時間を短縮できた。沈む夕日を小倉山で見て、充実感に満たされながら足早に下りる。駒の湯に20時に下山して、ガッチリ握手をした。

第五スラブは、想像以上に良いルートで、充実した時間を過ごせた。
越後駒ヶ岳を、佐梨を、またひとつ知れたことが嬉しかった。

ルート図
登攀ライン
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