| 日程 | 2026年2月20日~21日 |
| メンバー | 中澤 慧 |
| ルート | 白沢~会津朝日岳~大幽朝日沢滑降~大幽西ノ沢・東ノ沢中間尾根~丸山岳~黒谷川~安越又川林道~小立岩 ※白沢集落内へ駐車しないように。除雪の邪魔にならないように配慮すること。 |
| タイム | 2/21 白沢(4:00)-会津朝日岳(12:20)-鋸刃(14:00)-大幽西ノ沢(15:10)-Co970m(15:40) 合計11時間40分 2/22 C1(2:30)-丸山岳(10:35)-梯子沢出合(14:30)-P1447(17:35)-小立岩(20:10) 合計17時間40分 |
南会津をスキー縦走。
1日目 (2/20)
只見は新潟から遠すぎる。着いたのがもう日付が変わる頃。少し寝て、朝4時に白沢を出発。まずはいわなの里まで進む。只見は前日15~20cmほどの降雪で、そこまで沈まない。いわなの里からは沼の沢側にルートを取る。困難もなく、入滝沢を過ぎて、回り込んでから右岸尾根に取り付く。傾斜は強いが広い森で、登りやすい。

冬の会津朝日岳の記録は、当時は見当たらなかった。私たち夫婦は「ブナの沢旅」のakoさんの2011年の記録を参考に発電所スタートのルートを選んだ。(「ブナの沢旅」には大きな影響を受けている)
Wakaも私も山スキー初心者で、二人で手探りしながら会津朝日岳へ向かった。車に忘れ物をして発狂し、沼の沢山への尾根に常緑樹を見つけ、山頂からの滑りに怯えた。初めて山でまともにターンができて、妖怪板掴みで転び、細尾根を滑れなくてシートラで下山した。あの山行は、今も色褪せない。
5年前にWakaが記録を出して以降、発電所スタートが主流になりつつあるが、今回使用した入滝沢右岸尾根はスキー向きで勧められる。アップダウンも少なく、夏道より雪崩リスクも減らせる。

森は北面なので雪はまだ生きていて、ラッセルが少し深くなってくる。時間はかかりながらも苦労することなく沼の沢山と、叶の高手の間の稜線に乗り上げた。少し進むとポコがあり、5年前に幕営した場所がある。尾根には何日か前のスキートレースと思われる跡が少しだけ残っていた。


叶の高手までも雪はよく問題なく進め、当時はスコップで切り崩した雪庇も、普通に乗っこすことができた。ここから会津朝日岳までも遠く、暑さにやられてペースダウン。早めにドロップしたかったが、雪が腐るのは確定した。久しぶりに来たが、屏風のような山容に圧倒される。村杉半島や毛猛山も近い。

避難小屋を過ぎたあたりでカモシカが現れた。今年はよく会う。しばらく見つめ合っていた。

最後の斜面に差し掛かる。昔は滑れる気がしなくてスキーは置いていくとWakaに言っていたのが懐かしい。日差しで雪が重くなっていくのを感じながら、会津朝日岳に着く。相変わらず山頂は片斜面になっていて居心地はよくない。
深い山しか見えなくて本当にいいところだ。写真撮影もほどほどに鋸刃へ向かう。


大きなクラックと雪庇があり、スキーで進むのは困難。仕方なくシートラ・アイゼンで南面側を進んでいく。団子になる雪を取りながらキックステップでゆっくり進む。先週の桧岳のクラック祭りに比べれば大したことはなく、丁寧に進むだけ。

会津朝日岳の南壁は凄まじい。北壁より明らかに厳つい。洗戸沢に落ちる切れ込みが白沢ノゾキと言われるところだろう。

ようやく鋸刃に着く。雪が終わってるのはわかっている。大幽朝日沢を滑る意味はあるのか自問する。丸山岳までの稜線も魅力的だし、稜線通しに歩いた方が標高差的にも早いのは明らかだ。滑るにしても北壁を落とした方が気持ちいいのではないか。色々考えたが、ここに次いついるかわからないし、大幽西ノ沢・東ノ沢中間尾根の森を歩くだけでも価値があると踏んで、大幽朝日沢を滑ることにした。丸山岳への稜線歩きはまたいつか来よう。

丸山岳から左に伸びている尾根に登り返す。
雪庇から降りて平坦な場所まで移動してからシールオフ。ゆっくり滑り出す。やっぱり雪は終わっている。モナカ、ストップ、重い湿雪が入れ替わる感じで、苦しい滑りとなる。滑っているとは言い難い下降になった。ゴルジュは埋まっていて、日陰に入ると走るが、日が当たる面はストップ雪なので飛ばせず、慎重に下っていく。Co1050m付近で釜が出てくる。無理やり巻いて降りる。強引に下っていくも、いよいよ沢割れや起伏が激しくなってきた。途中で大幽朝日岳に登り返すこともできるが下まで行きたい。シールに換装して釜を巻きながら歩くと出合に着いた。左岸の台地がシシ踊りと呼ばれている場所だろうか。

ゴルジュ地形でブリッジを利用して対岸に渡り、登り返す。斜度は急だが、大きなブナの森だ。もう疲れてきたので、少し上がったところで幕営する。
2日目 (2/21)
上で朝日を見たかったので、早出する。斜面は西向きなので、かなり固くなっており、クトーでも苦労するのですぐにアイゼンに切り替えてバリズボしていく。途中で日の出を迎えてしまい、樹林の間から眺めるしかできなかった。こんなに時間がかかるとは。

少し開けている場所を探して、急いで移動する。なんとか稜線が染まっているところを見ることができた。


開けた場所が続くとスキーに換装したくなるが、奥に細尾根が見えているので我慢する。結局、Co1560mまでは雪切れや、細尾根や雪庇があり、アイゼンで通すしか無かった。


大幽西ノ沢・東ノ沢中間尾根に合流してからは尾根が広くなり、スキーで進める。中間尾根は厳冬期丸山岳の初登ルートで、黒谷川から大幽沢を遡行し、二俣から取り付いたようだ。普通、初登ルートというのは最も取り付き易いところになるはずなのに、今ではまったく歩く人のいないこの尾根が選ばれているのが面白い。

三ツ岩岳や会津駒ヶ岳が見えると、帰ってきた感じがする。ただいま。南会津に来てよかった。大幽朝日沢を滑ってよかったと思えた。
丸山岳~会津朝日岳の稜線もずっと隣に見えていて、やはりあちらも歩きたくなる。


途中からラッセルになり、ペースは落ちるが困難はないので久しぶりの南会津を満喫しながら進む。標高をあげるとオオシラビソが出てきて、三ツ岩岳北面を彷彿とさせる。

丸山岳手前のポコに荷物を置いて、丸山岳を往復。4年前の5月にもWakaと来た。とんでもない藪の中、スキーを担ぎ上げての山行だった。今では絶対やらない。山頂からの眺めは相変わらず素晴らしい。5月のような陽気で、厳冬期とはとても言えない。それでも、山が白いのは嬉しい。


大幽朝日沢は苦しい滑りだった。
シールオフして一瞬だけ滑って、すぐにまたシール。P1723まで登る。時間が遅く、雪は終わっている。西実沢は当時Wakaと滑ったので、まだ訪れたことのないP1698の南東尾根へ向かう。モチツボ沢と西実沢の中間尾根も滑れそうで、そちらを滑ったほうが梯子沢の出合に近いのだが、P1698の直下まで来てみると、目の前に広がるブナの森があまりに魅力的すぎて吸い込まれた。

P1698南東尾根の森は本当に美しい。スギゾネ沢左岸尾根を思わせる森だ。かつてWakaが「南会津を凝縮したような場所」と評したが、まさにその気配がここにもある。黒谷川流域は、南会津そのものなのだ。ひどい雪だが、森が最高だ。これで雪が良ければ泣いている。ここいれるだけで価値がある。

5月は三度の渡渉があり、身構えたが、西実沢は沢割れこそあれ、スノーブリッジが多く、難なく進めた。沢筋は重いラッセルで進まない。梯子沢出合からは日陰になりパウダーラッセルになる。
下梯子沢の出合につくと、沢割れは続いているので、上梯子沢との中間尾根に取り付いた。ここも非常に登りやすい大きなブナの森で、黒谷の深さを存分に感じることができた。雪がシールにまとわりついてきて、スーパー団子になっている。帰りたくなるが、ここがまさに帰り道なので歩くしかない。ワックスを忘れたので、靴ずれ防止のクリームを塗ったが無意味だった。

なんとか頑張って稜線に辿り着く頃には、夕暮れとなっていた。山が綺麗に染まっている。


ここに泊まって、城郭朝日山の方に縦走してから白沢へ戻るのも良さそうである。が、翌日が娘の一歳の誕生日なので今日下りることにする。南会津はのんびり楽しむのに適した場所なのだが、最後は忙しなくなってしまい、すこし申し訳なかった。
ささっと換装したら暗くなる前に滑り出す。エントリーの雪庇はジャンプで対処。道行沢下降も考えたが、下梯子沢が割れていたことや、暗くなってハマると面倒なので尾根下降とした。ちなみに「道行」という語は、名前の通り「道が通る」という意味を含んでおり、全国に点在している。ここ安越又川の道行沢も、峠越えや山仕事の動線として黒谷への生活道として使われてきた。


雪は最悪。沈み込むと足を取られるモナカなので横滑りができない。斜滑降の連続で高度を下げていく。途中からヘッドライトを点けるも、なんとか真っ暗になる前に林道まで降りれた。
栄養と水分を補給したら、安越又川林道を歩いていく。片斜面ではあるが、広いし、モナカなのでそこまで怖くはない。気温も下がったので、雪崩もあまり気にしなくていい。すっかり暗くなって、雪も固くなってきてスピードもあがる。サクサク進んで山毛欅沢出合いの橋を越えて右岸に移ったところから、なんとパウダー。森と日陰で雪がまだ温存されていたようで、小立岩までしっかりラッセルさせられた。
下山したら、只見町に移住したごっくんに電話して迎えにきてもらった。「1時間くらいかかるかも」と言っていたので、お湯を沸かしたり、シールを干したりと、お店を広げていたら30分くらいでやってきた。早いって。飛ばしすぎ。慌てて片付けて車に乗り込む。ごっくんの家に少しだけ寄らせてもらい山談義。彼は毎日要害山に登っていたり、只見町の伝統工芸であるマタタビ細工でカゴを作っていた。只見ライフを楽しんでるようでよかった。
そのまま南魚沼まで深夜移動して、娘の誕生日を一緒に過ごすことができた。

南魚沼市に移住して足が遠のいていた南会津。久しぶりの大きなブナたちに癒された。
連泊してゆっくり楽しみたい。妻や娘とも歩きたい。ここは、こころの故郷なのだ。