「バックカントリー」という言葉の違和感

雪山に関するニュースやSNSでよく見る「バックカントリー」という言葉。
バックカントリースキー、バックカントリースノーボード、略して「BC」。

しかし、この言葉に私はどうにも違和感を覚える。単なる呼び方の好みの問題ではなく、「山との向き合い方」や「行為の本質」が、実態からどんどん乖離しているように感じるからだ。

目次

「足元」が違うだけで、本質は「登山」

そもそも、雪山に入るという行為は「登山」だ。 足元がワカンなのか、スキーなのか、あるいはスノーシューやアイゼンなのか。その違いはあっても、管理されていない山へ入るという本質に変わりはない。

「バックカントリースキー」はあるのに、「バックカントリーアイゼン」、「バックカントリーワカン」や「バックカントリースノーシュー」という言葉は誰も使わない。
結局のところ、スキーやスノーボードという特定の道具を使うときだけ、あたかも特別な(悪い)遊びであるかのように「バックカントリー」というラベルが貼られている。この不自然さが、居心地悪い。

バックカントリーの意味の揺れ

本来、バックカントリーとはフロントカントリー(里山や管理されたエリア)の対義語であり、手付かずの自然や野生の世界を指す地理的な区分である。つまり「場所」を指す言葉であって、「行為」を指す言葉ではない。

ところが、「バックカントリーをする」という動詞的な使われ方が定着し、さらには「山を滑ること=バックカントリー」という限定的なイメージが先行している。 日本には、スキーを使って山に入る「山スキー」の文化が100年以上前から存在する。それはあくまで「登山」の一形態だ。

「スキー場中心の世界観」への疑問

報道のあり方にも疑問がある。よく目にする「コース外でバックカントリーをしていて遭難」という表現。 スキー場が存在しない山であっても「コース外」という言葉が使われることがあるが、世界の中心はスキー場なのだろうか。ちなみに私の家もコース外にある。

夏山であれば、登山者がロープウェイを使って入山し、登山道ではない場所で遭難しても、それは「山岳遭難」と報じられる。「バックカントリー登山」とは言われない。
それが雪山でスキーを履いているだけで、「バックカントリー」となり、スキー場を基準とした「コース外」という言葉に置き換わっている。当人がどんな意識と装備で山に入ったのかも重要ではあるが、こうした表現の混同が、事実関係をぼやけさせているのではないだろうか。そもそも、「コース外」などルールが意識される場所は、本来の意味での「バックカントリー」ではない。

登山者自身やメーカーも、軽やかで耳あたりのいい横文字にしようとしてきたのだろうが、呼び方も、響きも嫌いだ。

私は「登山」と言い続けたい

私は、これまで一度も「バックカントリーをしている」という意識で山に入ったことはない。 やっているのは常に「登山」であり、その手段としてスキーを選んでいるだけだ。ただそれだけのことなのに、世の中の便利なラベルによって、私の登山が別の何かに分類されてしまうことに抵抗がある。

言葉は、思考や行動の輪郭を決める。 だから私は「バックカントリー」とは呼ばない。 これからも「登山」と言い、「山スキー」と言う。

と、書いてきたが、私のYouTubeチャンネルでは、動画のタグにしっかり「#バックカントリー」と入れている。「#スキー登山」や「#山スキー」ではあまり検索してくれないのだ。ごめんなさい。

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補足

日本雪崩ネットワーク ロープの向こう側 に基本的な用語の説明があります。

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